加藤泉_LIKE A ROLLING SNOWBALL @原美術館 レビュー

原美術館と別館のハラ ミュージアム アークで同時開催されている。加藤泉氏の展覧会「LIKE A ROLLING SNOWBALL」の原美術館の方を観に行ったのでレビューを書いていきます!

原美術館は2020年12月に閉館を予定しているため、今後の展覧会もできるだけ観に行きたいですね。

2つの館で同時開催するのは、この展覧会が初めてのこと。原美術館では最新作の64点、ハラ ミュージアム アークでは、その軌跡を振り返る145点が展示されている。

図録にはロバート ストーとの対話やインタビューなども掲載されており、これがおもしろい!どちらかの美術館に行ったら図録を買って、読んでからもう片方の美術館にいくとより理解が深まると思う。

作品の置き方も加藤氏自ら「絵を描くように作品を設置」しており、「観るリズムみたいなものはすごく考える」という、作品との出会い方も見所だ。

(加藤泉とロバート ストーの対話「加藤泉–LIKE A ROLLING SNOWBALL」図録 より)

Information

会期
ハラ ミュージアム アーク 2019 年 7 ⽉ 13 ⽇[⼟]- 2020 年 1 ⽉ 13 ⽇[⽉・祝]
原美術館 2019 年 8 ⽉ 10 ⽇[⼟]- 2020 年 1 ⽉ 13 ⽇[⽉・祝]
主催
原美術館
特別協力
ペロタン
開館時間
11:00 am – 5:00 pm
水曜のみ8:00 pmまで開館(祝日を除く)※入館は、閉館時刻の30分前まで
休館日
⽉曜⽇(2019 年 8 ⽉ 12 ⽇、9 ⽉ 16 ⽇、23 ⽇、10 ⽉ 14 ⽇、11 ⽉ 4 ⽇、2020 年 1 ⽉ 13 ⽇を除く)、2019 年 8 ⽉ 13 ⽇、9 ⽉ 17 ⽇、24 ⽇、10 ⽉ 15 ⽇、11 ⽉ 5 ⽇、年末年始(2019 年12月26日[木]―2020 年1月3日[金])
入館料
一般/1,100円、大高生/700円、小中生/500円
(原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料、20名以上の団体は1人100円引)

原美術館 HP

所要時間は70分程度。

僕が初めて加藤氏の作品を観たのは豊田市美術館のコレクションで3つの顔が縦に並んでいる「無題」の作品である。不気味な印象もあったが、なぜか憎めないのと、強く記憶に残ったことを記憶しています。この強度みたいなものが加藤氏の作品の魅力なのだと思います。

原美術館 「無題」 展示風景

加藤氏は絵画や立体彫刻など、多様な表現形式があるが、「多分それも全部、絵のためにやっていると思う。」と話している。おそらくここでいう絵とは一般的に思う平面に描かれたものというよりはもう少し広いもののような気がします。

また、
「観る人がいろんなことを考えるように作っている」
「画面とのやりとりでこうなっていくというか…」
「人間に興味があって、人がなんでこの世界に生きているのかと、すごくシンプルなことに興味があって、そういう僕の考え方は入っているのだと思うけど、それを説明しようと思って全部やっているわけではないですね。」
という言葉や、
「僕の仕事は造形的なことから出発しているので。」
「色と形とか線とか、そういうものに人間のかたちを使っている感じですね。」
という語りから、加藤氏の作品には作家のバックグラウンドとしての思想はあるが、それをコンセプトとして練り上げて表現に落とし込むというよりは、人間という興味を、つくりながら考えるような、そこで生まれる作品の即物的な強度を高めていくような、こう言ってよければ、人間の深みを抽象化して絵画の中で表現しようとしているのではないかと感じた。その中で、プリミティヴのようなSFのような人間像が生まれるのではないか?

(加藤泉とロバート ストーの対話「加藤泉–LIKE A ROLLING SNOWBALL」図録 より)

また、加藤氏は島根県という神々や妖怪の文化が色濃く残る島根県で生まれ育ったことが思想や制作に大きな影響を与えていると言う。確かに、描かれているものからは木霊とか地蔵のような印象も受ける。昔の信仰対象と現代の加藤氏の人間の抽象からつくられる作品のイメージに通じるところがあるのは興味深い。
その二つに共通点を見出そうとすると、「現実世界と同じくらいの強度を持つ世界を僕はこの四角の中に作るのがいいと思っていて…絵だけしかない世界というか情報をここに入れたい」という、絵への強度の希求と、昔の信仰心や妖怪への恐怖などの強い感情をイメージの中に埋め込むという行為に何か通底するものがあるように感じた。

(加藤泉とロバート ストーの対話「加藤泉–LIKE A ROLLING SNOWBALL」図録 より)

次に私が気になったのは、「目」だ。加藤氏の作品に描かれる人間は共通して丸い離れ目だ。これが何とも言えない雰囲気を出している。どこを見ているのか、焦点が定まっていないような、何も考えていないような、我々の奥深くを覗き見ているような、そんな感覚を覚える。そして、その眼差しを通して鑑賞者の気分を反射しているようだ。暗い気分の時に鑑賞すれば、暗い眼差しに見え、明るい気分の時に鑑賞すると、実に愛おしく見える。加藤氏の作品には観る時によって作品の印象が変わっていくというおもしろさがある。これも加藤氏がこう観て欲しいという意図で作品を決定づけていないからだと思う。ここに、記憶に残る強度のある作品をつくるヒントがあるような気がした。

とてもいい展覧会だったので、ハラ ミュージアム アークの方も観に行きたくなりました!
両方行く予定のある方は、片方の美術館で展示を観ると「原美術館・ハラ ミュージアム アーク相互割引券」がもらえて、現地でスタンプを押すと、もう一方の美術館で100円引きになります。お忘れなく!

行くのが難しい方も加藤氏のホームページに作品が紹介されています。
IZUMI KATO HP

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