工事監理とは何か?施工管理との違いは?

設計事務所は建物を設計した後、工事の段階でも工事監理というもので建物に関わっていくが、工事監理とは何か。またどこまでが工事監理(設計事務所)の業務で、どこまでが施工管理(施工者)の業務なのか曖昧だ。そこで自分の勉強がてら工事監理業務についてまとめていきます。

まず、「工事監理」を知るためには「施工管理」との関係で理解する必要がある。そのため、まずは施工管理の業務内容を確認していこう。

施工管理を知る

施工管理の業務内容
  • 「工程管理」
  • 「原価管理(コスト管理)」
  • 「安全管理」
  • 「品質管理」

上の3つは品質管理が前提となっている。

そもそも工事を請け負うこととは「設計で意図した<品質>を具体的なもの(建築)につくり込んでいく。保証するためのものである。」
また品質を保証するという意味は2つあり、

  • 「故障が起こったら、引渡し後でも無償で補修する」
  • 「故障が起こらない品質をつくり込むこと」

という2つである。しかし、無償で補修しても、竣工後に完璧に直すことは難しいため、「故障が起こらない品質をつくり込む」ことが大切になる。
このつくり込みの体系的な活動が「品質管理」という手段であり、「品質保証」はその目的である。

工事監理を知る

工事監理の仕事は、設計の意図した品質を保証できる建物ができたかどうかを確認することである。

しかし、工事全般にわたって工事監理者が目を光らせて指導を行い、全ての材料や工事の内容を「検査し、合格したら次の工程に進んでいく」という、「指導監督型」では不可能に近く、施工者側に品質を確保しようとする意志がなければ、品質確保は難しい。

請負工事とは、「請負者の責任管理による工事の実施」である。
工事目的物を工期内に完成させることを請け負った施工管理者は、工事目的物の品質を確保するために、実際の工事のなかで品質管理を実施し、工事監理者はそれらの行為を確認していくのが役目となる。このような「自主管理確認型」の監理方式が重要であり、法的な規程からもこのような監理が想定されている。

建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)第二十五条の規定に基づき、建築士事務所の開設者が報酬を請求することのできる業務が定められている。

国土交通省告示第98号_一.工事監理に関する標準業務
① 工事監理方針の説明等
 (ⅰ)工事監理方針の説明
 (ⅱ)工事監理方法変更の場合の協議
② 設計図書の内容の把握等
 (ⅰ) 設計図書の内容の把握
 (ⅱ) 質疑書の検討
③ 設計図書に照らした施工図等の検討及び報告
 (ⅰ) 施工図等の検討及び報告
 (ⅱ) 工事材料、設備機器等の検討及び報告
④ 工事と設計図書との照合及び確認
⑤ 工事と設計図書との照合及び確認の結果報告等
⑥ 工事監理報告書等の提出
国土交通省告示第98号_二.その他の標準業務
(1) 請負代金内訳書の検討及び報告
(2) 工程表の検討及び報告
(3) 設計図書に定めのある施工計画の検討及び報告
(4) 工事と工事請負契約との照合、確認、報告等
 (ⅰ) 工事と工事請負契約との照合、確認、報告
 (ⅱ) 工事請負契約に定められた指示、検査等
 (ⅲ) 工事が設計図書の内容に適合しない疑いがある場合の破壊検査
(5) 工事請負契約の目的物の引渡しの立会い
(6) 関係機関の検査の立会い等
(7) 工事費支払いの審査
 (ⅰ) 工事期間中の工事費支払い請求の審査
 (ⅱ) 最終支払い請求の審査
国土交通省告示第98号
工事施工段階で設計者が行うことに合理性がある実施設計に関する標準業務
(1) 設計意図を正確に伝えるための質疑応答、説明等
(2) 工事材料、設備機器等の選定に関する設計意図の観点からの検討、助言等

このように、工事監理は現場での直接的な指導監督ではなく、提出された施工計画書を検討して、気がついたことがあれば助言を与えることと限定している。

また、建築士法第2条7によると、「<工事監理>とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう」と述べられている。この確認業務が工事監理の基本である。

このように施工管理と工事監理の業務を明確に切り分けることで相互に責任が生じ、それぞれの責任のもとで目指すべき品質を確保することができるのだ。
今後、工事監理のポイントを勉強しながらまとめていきたいと思います。

参考:非常駐者のための長田流監理指南書 著/長田雅夫

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